思し召し


 敷地内にある目隠しフェンスがアルミ製なのが気になって仕方がないので、蔓性の植物を絡ませて緑化しようと試みてきた。ヘデラだけでも数種類、キヅタ、テイカカズラ、クランベリー、ブラックベリーに、クレマチス。結果、蔓の這い性と強靭性、葉ぶりのほど良さ、というか、要は茂ったときのバランス。やはり王道のテイカカズラの真緑がいい。
 そのつもりで園芸屋を回ってみると、以前はホームセンターでわさわさ販売していたはずのテイカカズラが数軒回っても見当たらない。あるのはハツユキカズラばっかり。ハツユキはキレイだけどねぇ、時期的な問題かしらね。仕方なく来シーズンを待つことにして帰途につく。

 もの寂しい心持での車庫入れ直前、家の前の側溝に被さるグレーチングをガッチャンと跨ぐ。なにげなくその音に目を落とすと、はて、なんだかそれっぽい顔をした葉っぱがこちらを見ている。車から降りてもう一度、よくよく眺めてみる。
「どう見ても、テイカカズラだね、きみ。溝に溜まった堆積土に自生していたんだね」
どこから種が飛んできたのかは知らない。が、とにかく、探しものはすぐ近くに待ってるんだよ、ってなんだかなつかしい絵本みたいな話。

 しかし野生化した植物は大方言うことを聞いてくれない。這う根をゆっくりと解きほぐす。頑なな手を解きほぐす。根が深いのでほぼほぼ溝を全部掘り起こす始末。そして付着根を目的地の花壇に移植する。果たして。根付いてくれるのかな。あとは、自然の意志の思し召し。


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