猫の手
遅く起きた週末。ブナ(猫)は定時の起床時間から何度も頬に手をおいてくる。朝だよ。遅刻するよ。丁寧に、爪が当たらないように。ピト、っと。
(それでも4回に1回、意図はなくとも爪が唇に引っかかって痛い)
不思議な明け方だった。
海岸通りは、太陽を出迎える前の、少し緊張した面持ち。4時のジョギングに目覚ましをセットしたくせに、体がダル過ぎて起き上がれなかった未明。普段なら熟睡している時分から、彼はずっと、ぼくの顔に手を置く動作を繰り返し続けた。起きるんじゃなかったのか、と。
(終いには妙に痛いと思ったら、鼻を噛んでいた)
もう、いいんだよ。もう、いいんだ。ありがとう。
と伝えると、納得したように布団に潜り込んでまた眠り始める。
今はお前を通してしか語られないぬくもりがある。
お前を通してしか触れられないやさしさがある
それは、お前を救いあげた誰かの、やさしさと、手のぬくもりだと思う。
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