原風景

 高校先輩の声楽家の先導で、武村次郎さんの絵画に出会えたことが、この夏の幸せです。
 奥様は声楽家、武村浩子さん。
 故人であるお二人の、三春町のアトリエとレッスン室は、在りし日の芸術活動の香りが今も大切に、そして手付かずに、残されています。




 美術のことはさっぱり明るくない自分が、次郎さんの描く色調を目にしたとき、理屈を抜きにして、郷愁(ノスタルジア)のど真ん中に立っていましたそれが三浦半島を描いた風景だったからか。

 ご遺族の思いと、先輩の気概に、一も二もなく賛同してしまったのはただそのためです。


小網代風景 1992年


 小さな美術館開館に向けた準備に(すすんで)巻き込まれてます。
 ひとまず大掃除祭。
 二十年の間、動かなかった時間が、積もり続けた塵埃とともに、すこしずつ、すこしずつ流れ出していきます。
 コロナ対策のことなど考える余裕もなく、マスクは二重です。
 暑さもひとしおですが、昭和レトロなエアコン、いわゆるクーラーも昔を懐かしむようにギンギンに稼働しています。


ナショナルクーラー


 すべてが「美術作品の資料」と認識すれば、ことは簡単には進みません。
 とくに直接の関わりを持たなかった自分は、踏み入ることのできない過去の風景があり、それこそが芸術の原風景であるように思います。



デスクライト


 来月末の公開を目標に、あと幾回。
 まだまだイメージできませんが。

 アトリエに風が入ります。

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