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8月, 2020の投稿を表示しています

風が見える人

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   仕事時間に 津久井浜海岸を訪れる。この浜辺の伝説の風使い、香村さん(JPN57)の二日間に渡る、アツい勧誘に心が揺れて、人生ではじめてのウィンドサーフィンへ。  ちょうどその日、予約にキャンセルが出たとのこと。今日は絶好の、ビギナーズ日和、ミウラさん向きの風ですよ、という。香村さんは風が見える人。 自分は、 アハハぁ、とあいまいな笑いを浮かべながら、 10日前、3日連続でサッカーした (部活か!) 結果、ミートグッバイ※してからなかなか戻ってこれず、治りの遅さに歳による焦りを感じていた。 ※ミートグッバイ=肉離れ 「ミウラさん、今日の担当のインストラクター知ってます?」 「さぁ、でも優しい人ならだれでも」 「須長です」 「やります!」  ウィンドサーフィン日本代表、須長由季選手。ロンドン五輪のオリンピアンであり、本市唯一の 東京オリンピック 内定選手。  小学生時分にかるく溺れて以来、海に入るも躊躇ってきた自分が、指導を受けるにはあまりに恐れ入る。それでも今日ばかりは一生に二度とはない機会だと思い、履いてきたズボンのまま海へ歩み入る。  何十年もジョギングで横目に眺めていた地元の海。  パンツが濡れる、アカモが足に触れる、それだけで新鮮だった。  いきなりドボーンと落下して、ああ、こんなにしょっぱかったっけ、と喉が渇く。ヒリヒリ。食道がやける。  はじめの三〇分、ただただ落下し続ける。乗っても乗っても、ただ落下するだけの自分に、須長さんは忍耐強い。 「あの、陸の上ではないので。水の上では、踏ん張ってもだめです」  そうこうして、這い上がり続けたある時、またしても威勢よく落下した自らを、バサーっと音を立てて追いかけてきたマストが、テンプルに「いい感じ!」で入る。一瞬、くらっと視界が薄くなって、あっ、と思って、たぶん切れたかな、と覚悟したが、出血はない。 「大丈夫ですか?」 「はい!まだやれます」  懲りずに乗ってみる。まだちょっと、頭は定かではないのに、どうしてか、今度は落ちる気がしない。 「あれ、さっきまでと自分、なにか違います?」 「いえ、同じですよ。ただ、落ちるなら前に落ちるつもりで」  力が抜けたせいか、実際に重心が前に移ったのか。わからないが、とにかく、なにか余計なものが抜けたらしい。  一度立てるようになると、漕がなくても風が背中を押してくれ...

原風景

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  高校先輩の声楽家の先導で、武村次郎さんの絵画に出会えたことが、この夏の幸せです。  奥様は声楽家、武村浩子さん。  故人であるお二人の、三春町のアトリエとレッスン室は、在りし日の芸術活動の香りが今も大切に、そして手付かずに、残されています。    美術のことはさっぱり明るくない自分が、次郎さんの描く色調を目にしたとき、理屈を抜きにして、郷愁(ノスタルジア)のど真ん中に立っていました 。 それが三浦半島を描いた風景だったからか。  ご遺族の思いと、先輩の気概に、 一も二もなく賛同してしまったのはただそのためです。 小網代風景 1992年  小さな美術館開館に向けた準備に(すすんで)巻き込まれてます。  ひとまず大掃除祭。  二十年の間、動かなかった時間が、積もり続けた塵埃とともに、 すこしずつ、すこしずつ流れ出していきます。  コロナ対策のことなど考える余裕もなく、マスクは二重です。  暑さもひとしおですが、昭和レトロなエアコン、いわゆるクーラーも 昔を懐かしむようにギンギンに稼働しています。 ナショナルクーラー  すべてが「美術作品の資料」と認識すれば、ことは簡単には進みません。  とくに直接の関わりを持たなかった自分は、踏み入ることのできない過去の風景があり、それこそが芸術の原風景であるように思います。 デスクライト  来月末の公開を目標に、あと幾回。  まだまだイメージできませんが。  アトリエに風が入ります。

ひまわりの咲く部屋

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  コロナからのお店再開後、 馬堀海岸の Space & Cafe  MonTonにて、 ピアニストの オーナーが戯れに「歌って」といって弾いてくれたこの曲を。  数か月ぶりの、声にならない声で 、 口ずさんだとき。  この瞬間、この空間、とのあいだに  なにか特別なシンパシーが流れた。ような気がした。 『時には昔の話を』  まるで、このお店に溶け込んだような、 あるいは、  かねてからここに自然に流れ、ずっと漂っていたような、錯覚を覚えて、  いつか自分なりに歌ってみようと真正面から取り組むことにしてみている。 (加藤登紀子さんのような、 美しく深淵で、セクスィーな歌にはならないが)  発声レッスンもままならず、ともすればこのまま歌から離れていくのかなと、予感し ていた近頃に、 あたたかく、歌うことを受け入れてくれたオーナーには、  いつも、Sun flower (ひまわり)を感じます。  そして、いつも 挽きたての コーヒー一杯で、できるだけ長居しています。 ~ 時には昔の話をしようか   通い慣れた 馴染みのあの店   マロニエの並木が   窓辺に見えた   コーヒーを 一杯で一日 ~ 今年のひまわりは大きい