プリンセスピーチ

 ここに住んでからこの方、草刈りが入ったことなど一度もない斜面だった。
 藪の中に境界があるのも知らなかった、というのも適当すぎる認識で。うっかり越境しても、まぁ、青地だから、と思っていたら、草刈り業者も、うっかり刈っちゃうことがあるらしい。
 6月のある日、仕事から帰ると、気持ちよく刈り込まれていた枝垂れ桃。
 しばらく呆然としてしまったが、自分の落ち度なので仕方ない。

「すまなかったね」

 半べそをかきながら、切断面に癒合剤を塗って、それから毎晩、もしかしたら、
もしかしないかな、と涙で薄めたメネデールを寝る前にかけ続け。


しだれ桃の若葉
枝垂れ桃の若葉



 今朝。

 もしかしたら、もしかしたのかもしれない。

 生きてるよって、
 返事があった。

 おぉ、もう二度と、傷つけはしまい。

 元気になったら、安住の地へまいりましょう。
 プリンセス・ピーチ。

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