猿島の夕べにて
猿島HPより
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夜へ向かう無人島
ちょうどよさが、心地いい。
五感を満たす、大人のための島時間。
2023年夏、無人島・猿島にまた新しいムーヴメントが舞い降ります。
#猿島Magic ── ひるとよるの間に浮かぶ〝マジックアワー〟
この時間、あなたはどこで、だれと過ごしますか?
海の向こうがわ、西の空一面にひろがる夕暮れ
絶えずささやく波のおと
街とは違う、波打ちぎわのにおい
ビーチで見つけたシーグラスのまるみ
そして、海を見ながら飲むカクテル ──
太陽の時間から、月の時間へ。
https://yokosuka-portal.jp/sarushima-magic/
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かけがいのない夏をいただいたことに感謝します。
東京湾唯一の無人島、猿島にて、夏の夕暮れ時に新しい企画がはじまる。そのステージへのお誘いをいただいたとき、正直、いや自分じゃないだろう、と感じていた。
勤務先の顔馴染みのご縁で恵まれたお話とは言え、丁重にお断りしようとした。なぜなら、海辺はキャラに合わないのと、この企画のPRライター(上記)がとてもお洒落な大人向けであって、アンダーグラウンドの伏流を生きてきた自分にとって、すこしキラキラしすぎていると思った。
しかしリミットが迫るなか演者探しに困らせて申し訳ないという気持ちも、また顔馴染みであるがゆえであり、サポートメンバーとともに選曲を一任いただければ、そして弾き語りメインでよければ、ぜひ、と謝意をお示しした。
共演者は、数少ない音楽仲間から熟慮したが結果からみれば彼らしかいなかった。期間もないし、海辺だし、過酷な暑さだし、というか無人島だし。
一人はサックスの松戸さん。ジャズでもクラシックでもなく、テクニカルでもセンシティヴでもなく、街中の平和行進で吹きながら歩いていたその音色に、なにか胸に突き刺さるものを感じていた。
そしてもう一人は、自分の音楽創成期から、青さも苦さも知ったうえで、自分が表現したい世界を最も身近で理解してフォローに徹してくれたギタリスト、梅村さん(中学の同級生でもある)。
3人のユニット名は『message in a bottle』
ユニット名は?とプロフィールの締め切り時間に迫られて、思案しながら横須賀港を歩いていたとき、潮だまりに流れ着いているガラス瓶を見て、ああ、そうだね、あれだよねと、とても腑に落ちたものだった。
もちろんThe Policeの同楽曲名も意識にあがると同時に、頭のなかでは荒井由実さんの「瞳を閉じて」が流れていた。
それぞれの出演了承を得て動き出したころ、主催者から、すいません歌はNGで、という連絡が入り、真剣に、やっぱり…、と3分くらい立ち止まったけど、今、思えば、ほんとうに乗り掛かった船から飛び降りないでよかったと思う。
渡った島で、かけがいのない夏をいただいた。
この3人の演奏でなにができるか不安も期待も未知数だったが、同じ海辺育ちであればこそか、島に鳴っているだろう海音に溶け合うことだけを意識したリハにおいて、不安の海溝はたちまち埋まっていた。
こと旧友のギタリストとは、さしたる理由もなくここ十数年、一緒に演奏することはなかったが、むしろこのブランクが、お互いにとって長期熟成期間となり、十分な養分と、よい方向への醗酵を促していた。少々のブレ玉でも、理論的であってもなくても、なんでも拾い上げて、必要なものを補ってくれる彼の盤石な音楽的素養は相変わらずだった。
お声掛けいただいた企画の方々。そして共演者のお二人と、ご来場の皆さまに心から感謝します。
振り返れば、自分の生活圏にはいつも海があって、潮騒を吸い込みながら、歌にして吐息してきたことを再認識しました。
山もいいけど、海もいい。
波の音のなかで、どういう表現が自分たちにできるのか、貴重なヒントをいただきました。
冒頭のサックスソロで、奏者が選曲した、中島らもさんの「砂の国」という曲が素晴らしく、その歌詞が今回のクライマックス(いきなり)でもあったのでここに全文転記します。
おしえておくれ
おしえておくれ
とおいとおい 蜃気楼の
風吹く街角を
おまえの国を
さらっていって
さらっていって
いたいいたい 砂嵐の
風吹く街角へ
おまえの道へ
片目をとじれば
世界は夕暮れ さみしい気持ち
両目を閉じれば
世界は真夜中 手を放さずに
忘れておくれ
忘れておくれ
くらいくらい 日の出の前の
風吹く街角を
わたしの国を
一緒に出よう
二人で出よう
中島らもさんご本人の素敵な歌声の聴けるURL
☞ https://www.nicovideo.jp/watch/sm805020
そして、『message in a bottle』のステージを伴侶のとしるさんが映像作品にしてくれました。よかったらぜひご覧ください。
自分たちは、紆余曲折して、ここに流れ着いた漂流物。
それぞれがとても重要なメッセージを渡されて。
口には出さずともお互いがそれを共有している。
音楽をやっている理由がそこにある。
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