Happy Beech Day ~ブナと祝う日~ 


 雨の合間の春がひととき。文字通りの「祝日」となった、春分の日。
 Happy Beech Day   ~ブナと祝う日~。ぼくらの門出を祝う日をそう呼ぼうと言って、音楽ユニットのごきげんな旅人さんがパラゴン・カフェにて企画してくれた祝宴。終生忘れない1ページがまた。

※ Beechは、ブナの木。ブナの木言葉は「生まれいずる喜び」「繁栄」、花言葉は「独立」「勇気」。かつては木ではないとまで卑下されたブナは、実は多くの恵みを含み、豊饒の森を作る母のような存在





 出会った日が大雨だったし、大事なときは概ね雨だったから、当日も雨が降ってもいいように、「雨やどり」
(さだ まさし作)をゲストの美有さんに歌っていただくと、昼前まで降っていた雨は、午後にはあがり、春の日差しが、一次会のパラゴンカフェから二次会の我が家まで、一キロ弱お散歩して移動するぼくたちに降り注いでいた。我が家に戻ったときには、すでにリビングからウッドデッキまで入り切らない方々が主不在の家に待っていてくださり、夜更けまでホームパーティ、もといガーデンフェスとなってしまった。(ご近所に挨拶に行っておいてよかった)

 
そもそも事前の企画段階で、雨天、という想像はやめよう、となったものの、最近の空模様を振り返ると、つくづく貴重な晴れ間に恵まれたと思う。今、考えても、ひとまず、ほんとよかった。






 そして祝宴を通して、あらためて、伴侶がこれまで世界最高のメンツに囲まれてきたこと、燦然と輝く神輿の上に担がれて自分のところに来てくれたこと、に感謝して。
 同時にそれは、自分がこれまでに出会い関わり、導いてくれたすべての人々への感謝でもあって。
 これについては、伴侶が『門出』について語った次の言葉に要約される。

「結婚は門出じゃなくて、普通の暮らしの延長とか、ちょっと寄り道して本線に戻るくらいのもの、でも戻るとき1人じゃないってもの








カッカ作『 ToMoshiru 』

 列席の皆さま、スタジオ◎きのこの皆さま、パラゴンカフェ、カッカと美有さん、ヤスカドさん、SORaさん、なつみさん、ちひろさん、Cafe Te Peuさん、そしてごきげんな旅人さん、喜びに満ちた春の一日をありがとうございました。 

 最後に伴侶が「いつかお互いの人生が終わるとき、ああ、もう、あっという間だったね。あっ!と言う間の、たのしいひとときだったね、と言いながら目を閉じたいです」とスピーチしたとき、かなしいとか、うれしいとか、既知の感情とは違うどこかから、涙堰を切ったように水が溢れ出てきた。結果として、前夜にも間に合わず、直前まで推敲したLOVEレターもまともに読めずに終えたけども、それでいい気がした。やはり、サプライズは、予定してサプライズになるものではない、と思った。


 週が明けてパラゴンにお礼に訪ねると、デッキステージに先週の伴侶の写真が展示してあった。サプライズ。それは、予め用意されたポージングではなく、ごくまれにフレームに自然に流れ込んでくるそのときの空気感をとらえていた。もうカメラは触らないと言ったパラゴンのマスターが、なにかに驚いて思わず、シャッターを切る反応をして残してくれた一枚。

 しばらくお店に展示したのちに、いただけるという。人生の宝物がまた。思い出とともに。いつも、いつもありがとうございます。




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(読めなかった手紙)

 昨晩、海辺を走っていた。四十年も見てきた同じ海岸線。幼いころ、父は自分を連れだって、毎週末、ジョギングしていた。やがて青年になってから、ひとり走りながら、出会いもあり、別れもあっても、この景色の見え方は、変わらなかった。小粒の砂のような喜びが砕け、大粒の涙のような海だけが、静かにすべてを飲み込んでいく。それが自分の全世界だったし、自分自身であると思っていた。

 今日も半島の湾曲に、点々と連なる明かりが見える。なにひとつ変わらない光景をこれまでの半生、走ってきた。ただ、今はただ、ひとつのことが違っている。ひとつのことが分かっている。これまでも、この場所へ走っている人がいて、この先の半生も、走り続けている人がいることを。

 こんな心境で、ここを走るなんてこと、過去のどこかの時点で想像したことはない。
 この道が自分の故郷に続いていることを。


あのときの父子へ


 そのひとは、としるさんと言います。

 見えなくても、そのひとも、まよいながら、今日、この場所に向かって走っています。

 これまでの道標の出会いと別れ、喜びと悲しみに感謝して。

 今、その人の顔がわかります。

 迷いなく、はっきりと思い描けます。

 そのひとの名は。


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[Ending Movie]





 そのひとは、としる。としる。

 今、迷いなく、ここに走る。

 ひとりで進め、ときどきそう呼応しながら。

 ずっと、

 笑いながらそばを走っている。

 人生の最後に残るぼくの記憶の光景が、きみの笑顔でありますように。


 としる。

 としる。

 ぼくが走るさきは。

 今、迷いなく君のもとへ。


 以上

 見届けの妻へ


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[Opening Movie]
(ブライダルフォト撮影風景)


 


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