隠岐の島にて



  彼は振り向かずに海原の向こうへ走っていった
  ぼくにはもうどうしても
  泣いているようにしか見えなかった.

  泪ながしてもながしても
  溢れない西海


  すがっても追いすがっても
  沈みゆく追憶


  もう
  魂の底から
  自分を肯定することはないだろう、と
  最後の欠片を海へ投げ入れる

  それを失くした人に
  歌など歌えるはずないのに




隠岐の島にて
~西の海を見つめる馬~






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